笑った時に見えるきれいな歯並び、憧れますよね。大人になって歯列矯正をし、笑顔に自信がつき気持ちが明るくなった、という人も。
そしてあなたにお子さんがいれば、きれいな歯並びを与えてあげたい、と思うのが親心。
歯列矯正後の歯並びを考えると、矯正中の口の中の不快感や矯正器具の見た目の悪さは意外にも我慢できるもの。ただ矯正中の歯のケアは事前に説明があり納得はしていても、実際にやってみるとなんて面倒なんだと挫折しそうになる人が多いのも事実。
そんな時には補助的なデンタルグッズを使い、矯正中だからこそ普通の時以上に丁寧に歯と歯ぐきのケアをしてください。
矯正期間中はいろいろな器具が使えないので歯磨きだけで大丈夫、と思っている人は要注意です。最悪の場合矯正をやり直し、ということも。
さらには「矯正中でも歯磨きとフロスはきちんとしている」、という人も実は間違った使い方をしていて、歯や歯ぐきにダメージを与えていることもあるのです。
せっかく憧れの歯並びを手に入れるために頑張っているのに、歯を痛めてしまっては元も子もありません。矯正中の正しい歯磨きのし方、フロスの必要性や簡単に使う方法など、知っておくと大変役に立つ情報をお届けします。
1.矯正期間の歯のお手入れ
矯正器具が付いている時の歯のお手入れは特に手間がかかります。もし矯正をするのがお子さんでしたら、親がお子さんの歯の手入れの管理をすることになるでしょう。矯正が当たり前に行われているアメリカでの一般的なお手入れを参考にしてみましょう。
1-1 歯磨きは毎食後
Quote:foxnews.com
矯正器具を付けている間は食べ物のカスや歯垢が歯と矯正器具につきやすくなっています。歯磨きをしなかったり、歯磨きをしても間違った方法でしていれば、48時間ほどで歯肉炎になることも。歯磨きは歯の健康を保つために大変重要です。
歯磨きはできれば毎食後(おやつを食べた後も含めて)しましょう。さらに就寝前にもう一度。
矯正中の正しい歯磨きのやり方
・まず口内の食べカスを取り除くために水で口をゆすぐ
・熱いお湯で歯ブラシをきれいにする
・歯ブラシを45度の角度で歯ぐきにあてる
・少しずつゆっくりと小刻みに右に左に歯ブラシを動かす
・ワイヤーと歯の間を注意して磨く
・歯の表面だけでなく、裏側、そして歯の先も忘れずに
・少なくとも2、3分は丁寧に磨く
・最後に口臭予防のために軽く舌をきれいにする
食後すぐに歯を磨けないことがあった時は、口を水でゆすぎ、水をたくさん飲みましょう。これである程度の食べ物と糖分を洗い流すことができ、のちのちの歯への影響を最小限に食い止めます。
水で口をゆすいだり、水をたくさん飲むことは口臭予防にもなるので積極的に行ってください。
矯正中はできるだけ毎食後に歯磨きをしましょう。
1-2 デンタルフロスを毎日使用
矯正中は歯磨きだけでなく、デンタルフロスもきちんと使うことが歯の衛生状態を保つために重要になります。
矯正中のフロスも、基本的には矯正器具がついていない時とやり方は同じです。ただ矯正器具がついていると、フロスの糸をそのまま歯の上から下へと入れて動かすことができないので、ワイヤーと歯の間にフロスを入れ込まなくてはなりません。
フロスの糸を矯正器具の隙間に入れたうえで、歯と歯の間にフロスを通すやり方もありますが、アメリカでは通常フロススレッダー(Floss Threader)と呼ばれる糸通しのようなものを使います。
Quote:safco
フロススレッダーに適当な長さに切ったフロスを通し、輪っかと反対側の先を歯と歯の間の歯ぐきに一番近いところに入れます(画像では矯正器具は省かれています)。
矯正中のフロスとしてフロススレッダーの他にも、最初からある程度の長さに切ってあるものも売られています。スーパーフロス(Super Floss)と呼ばれ、先端がフロススレッダーと同様に細くなっていて、そのまま歯ぐきへと入れ込むことができます。
ただしこのフロスはスポンジ状のフロスなので歯と歯の隙間が広いところにしか使えず、アメリカではほとんどの人がフロススレッダーを使っています(無理に狭いところに入れるとフロスの繊維がバラバラに)。
Quote:growing smiles
矯正中の正しいフロスのやり方
・切ったフロスを通したフロススレッダーをワイヤーの下に入れる
・フロススレッダーを歯の間に入れる
・フロススレッダーを外す
・歯の側面にフロスを添わせ磨く
・歯ぐきの中まで入れ込んで磨く
・フロスを取り出す
矯正器具がついていると、普通以上に歯と歯の間に食べカスや歯垢がたまりやすく、歯磨きだけではとうてい取り切れません。
矯正中に一本一本の歯をフロスで磨くのは大変面倒な作業ですが、毎晩(就寝前が最適)きちんと歯の汚れを取ることで、歯の健康を守ることができます。
矯正中もフロスを毎晩使いましょう。
2.矯正中の歯のホワイトニング
Quote:escobarfamilydentistry.com
矯正中は歯磨きをしても表面の汚れがなかなか落ちず、黄ばみがいつもよりも目立ちませんか?ホワイトニングをしたくなる人もいると思います。
実は矯正中のホワイトニングは厳禁です。ホワイトニング成分の入った歯磨き粉、マウスウォッシュも避けてください。矯正中にホワイトニングをすると、矯正器具を外した後にホワイトニングをした部分とされていない部分の色の差が出てしまうからです。
この色の差を調整しようと思っても、一回のホワイトニングではうまくいかない可能性もあり、そういうリスクを取るべきではありません。矯正中の歯の黄ばみは気になりますが、我慢してください。
(黄ばみを避けるために)濃い色の食べ物や飲み物を全部避けることも現実的ではありません。矯正中の歯の黄ばみを少しでも抑えようと思っているなら、毎食後の歯磨き、就寝前のフロスを欠かさないようにしましょう。
矯正中のホワイトニングは厳禁です。
3.矯正中の歯のケアと注意点
矯正中に”毎食後歯磨きをする”、”毎晩フロスを使う”ことの他にもいくつか取り入れるといい歯のケア方法、さらに注意する点があります。ここで紹介する矯正中に使えるデンタルケア製品は、日本でも手に入るものばかりなので検討してみてください。
3-1 歯間ブラシを使う
矯正中は歯や歯ぐきが敏感になっていることがあります。そのため歯ブラシはやわらか目の物を使うとよいでしょう。やわらかい歯ブラシは、歯と歯ぐきに優しく、矯正中に最適です。
さらに細かく歯や矯正器具のお手入れをしたければ、歯間ブラシがおすすめです。歯ブラシだけでは取り切れない歯の表面の汚れや、矯正器具に付いた汚れを落とすことができます。
歯間ブラシは、食後歯磨きができない時に、歯と歯の間に詰まった食べカスを取り除くのにも便利です。
注意して欲しいのは、歯の黄ばみや矯正器具の汚れが気になるからといって、力任せに歯間ブラシを使わないこと。力を入れ過ぎると歯ぐきを痛めたり、矯正器具を壊してしまったりする可能性があります。
そして歯間ブラシを歯と歯の間に使う場合、歯の隙間の大きさに合ったものを選んでください。歯間ブラシはさなざまなサイズのものが売られているので迷った時は、通っている矯正歯科医に相談してみましょう。
Quote:Brush Marks
矯正中は柔らかめの歯ブラシと歯間ブラシを使いましょう。
3-2 マウスウォッシュを活用
矯正中のマウスウォッシュの使用について、迷われる方もいるでしょう。矯正中は食べカスが矯正器具に残り口臭が出やすくなるので、マウスウォッシュをむしろ積極的に使ってください。
さらに矯正中は歯ぐきや口内に炎症が起きやすく(特に矯正器具が触れるところ)、それを防ぐためにもマウスウォッシュは役立ちます。マウスウォッシュは毎食後の歯磨きの後や就寝前に使うと大変効果的です。
マウスウォッシュを使うことで矯正中の口内の不快感を減らせます。
3-3 フッ素を利用
矯正中はいくら気を付けていても、通常の時と同様に歯を清潔に保つことは簡単ではありません(とても虫歯ができやすい状態)。ここでフッ素が活躍します。フッ素の効用は、
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- エナメル質を強化
- 細菌の活動を抑制
- 初期の虫歯の修復を促す
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で、矯正中の歯のケアが困難な時に補助的に使うと、歯の健康を保つ助けになります(歯のケアの基本はあくまで歯磨きとフロス)。
Quote:tahquitzdentalgroup.com
もう少しフッ素の効用を詳しくみてみましょう。
エナメル質を強化
歯のエナメル質は酸に弱い性質があります。ところがフッ素があると酸に対して強い結晶が作られ、それがエナメル質を強化し、虫歯を予防します。
細菌の活動を抑制
フッ素は細菌の活動を弱めます。これはフッ素が細菌の出す酸の働きを抑制するためで、その結果虫歯の予防になります。
初期の虫歯の修復を促す
エナメル質の成分の一つであるカルシウムは、虫歯を作る細菌の酸により唾液の中に溶け出してきます。この時に唾液の中にフッ素があるとエナメル質の石灰化を助け、歯の修復を促すのです。
フッ素は矯正をしていない時にももちろん虫歯予防に役立ちます。特に虫歯ができやすい人でなければ、フッ素入りの歯磨き粉、フッ素入りのマウスウォッシュの使用で十分かもしれません。
虫歯がもともとできやすい人は、フッ素ジェル(通常の歯磨き後に再度歯ブラシにジェルを付けて歯磨き)やフッ素塗布の方がいい場合も。フッ素入りの歯磨き粉やマウスウォッシュで歯の健康が保てそうか、フッ素ジェルやフッ素塗布をするべきかは、通っている矯正歯科医に聞いてみましょう。
矯正中で一番厄介なのは、虫歯や歯周病が進み、矯正器具をいったん取り外す必要が出た時です。虫歯や歯周病の治療を避けるためには、予防が一番重要なのは言うまでもありませんよね。歯磨きやフロス、フッ素は歯と歯ぐきをいい状態に保ち虫歯や歯周病を防ぐのに大変有効です。
矯正中にフッ素を利用し虫歯を防ぎましょう。
3-4 歯磨きをし過ぎない
毎日歯磨きをすることは、歯と歯ぐきの健康のためにとても大事なこと。でも口臭や虫歯が気になるあまり力任せに磨くのは、磨き過ぎ”オーバーブラッシング”です。歯を磨き過ぎて、歯や歯ぐきにダメージを与えると以下のような症状が出てくることも。
Quote:allabout-japan.com
歯肉擦過傷(さっかしょう)
力を入れ過ぎて歯を磨いたり(特に乱暴に横磨きをした場合)、古く毛先の広がった歯ブラシや新しく固い歯ブラシを使った時に起こります。磨き過ぎにより歯肉に傷が付いた状態です。
歯肉退縮
歯肉は残念ながらいくら手入れをしても歳とともに後退しますが、歯ブラシや歯の磨き方が原因で歯肉の退縮が起こることもあります。力の入れ過ぎや乱暴な横磨き、古い歯ブラシが原因です。歯肉が後退すると、歯の根っこの部分が露出します。露出した歯の根っこはエナメル質がなく柔らかい象牙質なので、ますます表面が薄くなっていき、知覚過敏を起こすことに。
クレフト
歯肉にできた縦の裂け目で、U型、V型をしています。力任せの縦磨きにより残った歯垢が原因で炎症が起こり、歯肉が後退することが原因です。噛み合わせの異常によって起こることもあります。
フェストゥーン
歯肉のふちが輪っかのように盛り上がった状態です。力任せの歯磨きによって起こります。
アメリカの経済紙『ウォールストリートジャーナル』によると、アメリカ人の10~20%がオーバーブラッシングにより歯や歯ぐきを痛めた状態だそうです。
力任せによる歯磨きは、エナメル質を薄くし、歯ぐきにダメージを与え後退させます。それが原因で、歯周病や歯の根っこに虫歯ができる可能性も否定できません。矯正中は特に固い歯ブラシを使うのは避けましょう。
歯磨きをする時に力を入れたら歯がよりきれいになると思いがちですが、それは間違っています。歯を磨く強さではなく、いかに正しい方法で隅々まで丁寧に磨くかが一番重要です。
矯正中は力任せの磨き過ぎに注意してください。
3-5 定期的に歯医者に通う
Quote:careertrend.com
矯正中も通常の時と同じように歯の定期健診に通いましょう。アメリカでは半年に一回歯医者に行き、歯や歯ぐきの健康状態をチェックし、同時に歯石を落としてもらいます。
半年に一回というのはそれ以上待つと歯石が固くなり取りにくくなるからです。歯の保険に入っていれば、半年に一回の定期健診は無料かわずかな自己負担ですむのに、治療となるととても高額になることが多いのがアメリカ。治療よりも予防に力を入れる、という特殊な事情もあります。
極端な歯医者の場合、半年に一回来れない人は今後の診察を断わることさえあるぐらい、定期健診を重要視します。矯正中ももちろん定期的に通うのが一般的です。
矯正中はいつも以上に歯石がたまりやすく、虫歯や歯周病になるとひどい時には器具を取り外さなくてはなりません。定期的に歯医者に通い、予防に努めましょう(注:アメリカでは矯正歯科と通常の歯科は完全に分かれており、矯正中は両方に通わなくてはなりません)。
矯正中も歯の定期健診に通いましょう。
4.まとめ
Quote:dentalguideaustralia.com
矯正期間中の歯のお手入れは通常の時とほぼ同じ。基本は毎日の歯磨きとフロスです。ただ矯正器具がついていると、普通のフロスでは思うように歯のお手入れはできません。
そこで活躍するのがさまざまなデンタルケアグッズ。特にアメリカで必ず使われているフロススレッダーとスーパーフロスは、矯正期間中にフロスをする時の補助として使うと大変便利です(日本でもアマゾンなどで入手可能)。
その他にも矯正器具のお掃除に歯間ブラシ、口の中の不快感をやわらげるマウスウォッシュ、虫歯を防ぐフッ素、など矯正期間中に使用を検討してみるといいものがいろいろあります。
矯正中だからといって歯のお手入れをいい加減にしていると最悪の場合、虫歯や歯周病のために矯正器具を取り外すことになってしまいます。矯正期間中こそ、補助的なデンタルケアグッズを使い、いつもよりも丁寧にお手入れをし口内の健康を保ちましょう。
Quote:yellowpages.ca
もし矯正中の歯のお手入れに疑問がある時は、通っている矯正歯科医に聞いてみることが大切です。おすすめしたフロスシュレッダーやスーパーフロスはあると大変便利ですが、なくてもフロスをすることは可能なので、フロスの使い方をぜひ聞いてみてください。
そして通っているのが歯列矯正専門医の場合、矯正期間中も歯科医に定期的に行き、歯と歯ぐきの状態を診てもらいましょう。
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