フロスを使った後、なんとなく匂いを嗅いで、その臭さに驚いたことはありませんか?
フロスは歯と歯の間にたまった食べカスを掃除するグッズなので、使用後に多少臭うのはある意味自然なことなのですが、使用後のフロスが「明らかにくさい」となると、まず間違いなくあなたの口臭は相当なにおいを放っていると思います。
この記事では、フロスを起点にして、口臭との因果関係を説きつつ、どうやったら臭いの元を断つことができるのかを解説していきます。
重要なのは、臭いが歯間に沁みつく食べ物は人と会う前には極力食べないことと、もう一つは食後にミント味のガムやタブレットを口に入れることでの口臭ケアをしっかり行うこと、この2つです。
ただし、「ミントのガムなら俺も噛んでるけど口臭が消えない気がするぞ」という方も当然いらっしゃると思いますので、口臭ケア先進国のアメリカで常識とされている「ミント以上に人気のある口臭対策」をご紹介します。
1.臭いにおいを発生させる食べ物
ガーリックを多用したイタリア料理や中華料理、においの強い野菜(玉ねぎやニラ)、発酵食品(納豆やキムチ)の食べかすが歯の間に残ると、ガムを噛(か)んでも歯磨きをしても臭いが残ります。
フロスが臭いという時の一番の原因は食べ物です。明らかに臭いがキツイ食べ物は原因として明白ですが、そうではない食べ物や飲み物にも臭いの原因があるのをご存じでしょうか?
Quote:Thera Breath
1-1 アリシン
ニンニクやネギが臭いのは硫化化合物「アリシン」が原因です。本来無臭のアリインという物質が、切ったりつぶしたりすることで組織内の酵素に触れるとアリシンに変化します。このにおいが口臭の原因の一つです。だからといってにおいのキツイ食べ物を避けるのはおすすめしません。なぜならアリシンには、たくさんの効能があるからです。
アリシンの効能
・疲労回復 アリシンはビタミンB1(ニンニクや玉ネギに含まれる)と結びつくとアリチアミンという物質になります。ビタミンB1はそれだけでも疲労回復に効果がありますが、水溶性なので体内に長く留まりません。反してアリシンとビタミンB1が結合したアリチアミンは脂溶性なので、吸収されやすくビタミンB1の働きが持続し疲労回復に効果があります。
・血栓予防 アリシンには血液が凝固するのを遅らせる作用があり、血液をサラサラにして、血栓を予防する効果があります。
・血糖値を抑制 アリシンとビタミンB1が結びついたアリチアミン。この吸収のいい脂溶性に変わったB1が糖質の代謝を上げるのを手助けします。
・コレステロール値を下げる アリシンにはコレステロールと脂肪酸の合成を抑制する効果があります。
・抗菌・殺菌作用 アリシンには風邪などを引き起こすぶどう状球菌、食中毒の一因である大腸菌などを抑制する効果があります。
その他にも安眠作用や体を温める作用、消化吸収を助ける作用なども知られています。
1-2 発酵食品
一部の発酵食品の中にはキツイにおいのするものがあり、それがフロスを臭くする原因になっています。においそのものもありますが、歯の間や歯茎に留どまりさらに発酵をすることで、元のにおいよりもより強い臭いを発します。
Quote:Lover of Creating Flavours
・納豆 納豆のにおいは納豆菌が作り出します。においの主な成分は発酵の過程で納豆菌が大豆のタンパク質を分解した後に発生するアンモニア臭や有機酸などです。納豆は日がたつと発酵が進み、さらににおいにきつくなります。
・キムチ キムチのにおいの主な原因は原材料の一つであるニンニクですが、それだけではなく製造工程も関係しています。魚介類を発酵させ、さらに他の材料とも乳酸発酵させるからです。
発酵食品は口臭のことを考えると避けたい食べ物でも、ニンニクや玉ネギと同様、体にいい食べ物でもあるので完全に排除するのはやめましょう。お出掛けや人に会う予定を考え、夜に食べる、などの工夫をしてむしろ積極的に取り入れてください。
1-3 動物性タンパク質
Quote:Global Meat news.com
・ヨーグルトやチーズ 腸内細菌を整えてむしろ口臭にはいいといわれている発酵食品のヨーグルトも、口臭の原因になりえます。それはチーズ同様ヨーグルトも動物性タンパク質が原料だからです。
・動物性タンパク質 動物性タンパク質が口内の細菌により分解されて生じる、メタンチオールをはじめとする硫黄化合物が強烈な臭いを発生させます。
動物性タンパク質の健康への影響に加え、口臭の原因にもなる、と聞くと制限した方がいいのではと思いますが、動物性タンパク質は、植物性タンパク質よりも体内への吸収がいいので効率的に栄養が摂取できる優良食品です。さらに赤味の肉に含まれる鉄分は、植物由来の鉄分よりも吸収がいいので、口臭のことだけを考えて排除してしまうと問題です。
1-4 飲み物
・コーヒー コーヒーは香りがよく、食後に飲むという人も多いと思います。残念ながらコーヒーは唾液の量を減らし口の中を酸性にし、細菌の増殖を促進。コーヒーに含まれるカフェインには利尿作用があるのでさらに口内を乾燥させます。それに加え、コーヒーに入れるクリームは動物性なので時間がたつと臭気を発生。
・ソフトドリンク 糖分の多いソフトドリンクは虫歯の原因になるだけでなく、口内の細菌のエサとなり口臭の原因である硫化化合物を生成。ソフトドリンクにはカフェインが含まれているものも多く、口の中を乾燥させコーヒーを飲んだ時と同様のことが起こります。
・アルコール アルコールは肝臓で分解されるとアセトアルデヒドという物質に変化し、さらに分解され酢酸になり、酸っぱいにおいを発生。それだけでなく、アルコールには利尿作用があるので、口内を乾燥させ細菌の発生を促進します。
口臭の原因となる飲み物をみてみると、いわゆる嗜好(しこう)品であることが分かります。全く断ってしまうのは生活の質の点から見ておすすめしません。飲む量を制限しつつ、適量を楽しみましょう。
2.フロスが臭いと虫歯や歯周病?
食べ物が原因でフロスが臭い、というのは分かりやすい例です。その他にもフロスが臭くなる原因はあるのでしょうか?
2-1 虫歯
虫歯の初期だとフロスが臭くなることはあまりなく、フロスが引っかかったり切れたりして何かおかしい、と気付くことがあります。さらに進行し虫歯の穴が大きくなると、そこに歯垢(しこう)や食べかすがたまり、フロスをすると臭いにおいがします。
さらには虫歯の治療痕の詰め物や被せ物に不具合があると、隙間に歯垢や食べかすがたまりフロスが臭い、ということも。
いずれの場合も臭いが続くようなら歯医者に一度行ってみることをおすすめします。
2-2 歯周病
フロスが臭くなるもう一つの理由が歯周病です。歯周病は以前は歯槽膿漏(しそうのうろう)といわれていました。現在は軽い歯周病を歯肉炎、重い歯周病を歯周炎と呼んでいます。
・歯肉炎
歯肉炎の段階では、歯と歯肉の間を磨いた時や歯と歯の間にフロスを入れた時に出血しやすくなります。歯と歯肉の境目の掃除がきちんとされていないと、そこに歯垢(細菌)がたまり歯肉が赤くなったり、腫れたりするのです。
Quote:Do Gooder
フロスを初めて使った時に何日か出血するのはよくあることですが、日にちがたっても出血が止まらないようなら歯肉炎の可能性が。この段階で歯の根元のお掃除をきちんと続ければ、ほとんどの場合歯周炎に進行することはありません。
そこでフロスが重要になってきます。歯磨きだけでは届かない歯茎にたまった歯垢を、フフロスで掻き出しましょう。ただし歯垢が固くなり歯石になってしまっている場合は、フロスでは取れないので、歯医者へ行くことをおすすめします。
・歯周炎
歯肉炎が歯周炎にまで進行している場合、歯茎から膿(うみ)が出て、さらにひどくなると歯を支えている骨にまで影響が及びます。膿によって口臭がひどくなり、フロスをするときつい臭いが。
Quote:Steven A. Goodman Dentistry
画像の”2”や”3”の段階である歯周炎になってしまったら、歯と歯の間に大きな空間ができ、フロスだけではうまく歯垢や食べかすが取れません。歯周炎にまで進行すると歯医者へ通う必要がありますが、治療中のお掃除はフロスに加え歯間ブラシを使うのが効果的です。
ピックやフロスでは届かない歯の空間を、細かいブラシの先によりきれいにすることができます。
Quote:Dentagama
3.フロスが臭くなる食べ物 臭いを防ぐ食べ物
日本人は朝からニンニク、という人はほとんどいません。絶対に息が臭くなるのが分かっているからです。それでは歯や口臭ケアの先進国のアメリカ人にとって、ニンニク玉ネギ以外に息が臭くなるといわれている食べ物はなんでしょうか?
口臭対策グッズの定番は何といってもミント味ですが、その次にアメリカで人気のあるフレーバーはなんだと思いますか?日本人にとっては意外なものかもしれません。
3-1 フロスが臭くなる食べ物~アメリカ編~
・赤味の肉
・パイナップル
・マンゴー
・ポップコーン
・ココナッツ
・海藻
・ほうれん草
・バナナ
Quote:Southeast Family Dental
これらの食べ物の共通点は何か分かりますか?においのキツイ食べ物ではないし、発酵食品でもない、動物性タンパク質でもありません。
共通しているのは歯の間に挟まりやすい、ということです。通常唾液は食べ物を小さく分解し、胃へ送り込む役割をします。ところがリストにあるような食べ物は、歯の間に詰まりやすく、口内の細菌のエサになりフロスが臭くなる原因に。
歯の間に詰まりやすい物を食べた後は、夜を待たずにフロスや歯間ブラシで歯の間を磨くように、とアメリカではいわれているようです。
さらに、
・レモン
・オレンジ
・トマト
・パプリカ
・クルミ
・糖分
・パン
・赤味の肉
という食べ物リストもフロスが臭くなる原因といわれています。こちらの共通点は、酸性もしくは消化された後に、体を酸性にする食べ物です。かんきつ類やトマトは分かりますが、酸性、と聞いてパンなどはあまり思い付きませんよね。
Quote:Designer Water
とはいえにおいの強いニンニクや玉ネギ、チーズなどの発酵食品に比べると食べた直後に臭いを発するわけではなく、口臭の原因になる細菌は酸性の環境で増殖するので食べ過ぎには気を付けましょう、ということのようです。
3-2 臭いを消す食べ物~アメリカ編~
日本ではミントはそのものを食べて口臭を消すというよりも、歯磨き粉やガムのフレーバーになっています。さらに最近では、付け合わせ野菜として見られていたパセリが口臭予防になるということで、タブレットにもなっていますね。
アメリカでももちろん一番人気はミント。フレーバーとしてだけではなく、そのまま食べたりハーブティーとして手軽に飲んだりします。では次に口臭予防に人気のあるフレーバーはなんでしょうか?実はシナモンなのです。シナモンに口臭予防効果があるとは意外ではないでしょうか?
Quote:remedies for me
アメリカでは人気のあるシナモン味のチューインガム。想像してもピンときませんが、1970年代に商品化されました。昔から口臭予防になるといわれ、シナモンティーとして飲まれており、そこからチューインガムのフレーバーになったようです。
シナモンにはハッキリとした香りがあり、それがミントのように口臭をカバーするのかと長らく思われていました。ところがシナモンは口内の細菌を減少させることにより、口臭予防に効果があることが臨床試験で証明され、学会で発表されています。
(参照:https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/21290983)
手軽に口臭予防ができるシナモン味のチューインガム、
Quote:hy-bee
その他にもシナモン味のあめ、グミ、タブレットなど種類も豊富です。
さらには口臭対策グッズとして、シナモン味の歯磨き粉や、
Quote:Amazon
シナモン味のマウスウォッシュ、フロスなどもあります。
これらの嗜好品やデンタルケアの商品は全て大手の会社から出ており、シナモンがアメリカでいかに人気のあるフレーバーであるかが分かります。
4.まとめ
フロスを使った時に、あまりの臭さに驚いた経験のある人は少なくありません。それもそのはず、よく考えてみれば歯の間や歯茎に入ってしまった食べ物は、歯磨きだけでは取れません。唾液で分解され自然に出てきたとしても、長い時間が掛かってしまいます。
その間にどんなに元はいいにおいを発していた食べ物でも、臭くなるのは簡単に想像ができますよね。何かを食べればフロスが臭くなるのは当然のことです。
ただその臭いの原因が、食べ物だけではないということに注意をしてください。場合によっては進んだ虫歯や歯周炎の可能性もあります。進んだ虫歯の間に詰まった腐った食べ物や、歯周炎の膿が口臭の原因になり得るのです。
においのキツイ食べ物を食べていないのにフロスが臭い、という時は口内の状態が悪いかもしれない、ということを疑ってみてください。もっといいのは、虫歯を進行させたり歯肉炎を歯周炎になるまで放置せず、フロスを日頃からきちんと使うようにすることです。少なくとも日に一回、就寝前に必ずフロスをするように習慣付けましょう。
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